
「USDTとは何か、その1USDT=1USDの仕組みや安全性、実際どうやってUSDTを日本から入手して使えばよいのか、本当に注意すべきリスクや購入・送金のハードルも知りたい。」
こうした疑問に答えます。
本記事の内容
USDTとは、1USDT=1USDが維持されるよう発行体であるテザー社が準備資産を管理し、安定した価値を実現するステーブルコインのこと。米ドルと連動する仕組みにより、価格変動の激しい仮想通貨市場でも安定した取引が可能になります。
記事を読めば、USDTの基本から使い方、ペッグの成り立ち、ネットワークごとの違いとリスク、そして規制・税金まで、面倒な疑問をまとめて解消できます。次の章から詳しく見ていきましょう。

USDT(テザー)は、米ドル(USD)と1対1で価値が連動するように設計されたステーブルコインです。
暗号資産市場の価格変動リスクから資産を一時的に守る避難先や、異なる仮想通貨間の取引を円滑にする橋渡し通貨として広く利用されています。
USDTは、Tether Limited社という企業が発行・管理しています。Tether社は香港を拠点としており、USDTの発行や償還、準備資産の管理を一元的に行う組織です。
USDTは中央集権型のステーブルコインであり、発行体の信用が価値の裏付けの根幹となります。Tether社は、米国債や現金、現金同等物を準備資産として保有し、1USDT=1USDの価値維持を担保しています。
USDTの価値が米ドルと連動する仕組みは、発行量と準備資産のバランスによって成り立ちます。ユーザーがTether社に米ドルを送金すると、同額のUSDTが新規発行される流れです。
逆に、ユーザーがUSDTをTether社に返却すると、同額の米ドルが返還され、USDTは市場から消滅(バーン)されます。この仕組みにより、USDTの流通量と準備資産が常に一致するよう管理されています。
Tether社は四半期ごとに準備資産の構成を公開しており、近年は米国短期国債や現金、現金同等物が中心です。このレポートは、USDTの安全性を評価する上で重要な情報源となります。
準備資産の内訳を確認することで、usdtが本当に1USDT=1USDの裏付けを持っているかを判断できます。
USDTを米ドルに換金(償還)するには、Tether社にUSDTを返却する必要があります。償還は、Tether社が認定したユーザー(主に取引所)を通じて行われることが多く、個人が直接償還する場合、最低額や手数料が発生する仕組みです。
また、Tether社は不正取引や制裁対象のアドレスに対しては、usdtの凍結や償還拒否を行うことがあります。
ここからは、USDT(テザー/テザーコイン)が有する以下3つの特徴について詳しく解説します。
上記についてそれぞれ詳しく見ていきましょう。
テザーとは、米ドルと連動する世界初のステーブルコインです。ビットコインやイーサリアムなどの他の仮想通貨に比べて、価値の安定性が際立っています。
ステーブルコインとは、法定通貨やコモディティなど、他の「モノ」の価格に連動するように設計され、価格の安定を目指す仮想通貨を指します。他にはWorld Liberty Financial USD 仮想通貨などもあります。
ステーブルコインには、以下の4種類があります。
| 種類 | 特徴 | 具体例 |
|---|---|---|
| 法定通貨担保型 | 円やドル、ユーロなどの法定通貨と連動する仮想通貨 | テザー、USDC、バイナンスUSDなど |
| 仮想通貨担保型 | 他の仮想通貨に連動する仮想通貨 | DAI、SUSDなど |
| 無担保型(アルゴリズム型) | あらかじめ設定されたアルゴリズムが、市場に応じて自動的にコインの供給量をコントロールする | フラックス(FRAX)、ニュートリノUSD(USDN)、マジック・インターネット・マネー(MIM) |
| コモディティ(商品)型 | 金や銀などの物理的資産(コモディティ)と連動する仮想通貨 | PAX Gold、ZPG(ジパングコイン) |
USDTは、ERC20ネットワークだけでなく、複数のネットワークで利用できる点が特徴です。多くの仮想通貨は一つのネットワーク上でのみ機能するため、異なるネットワーク間での直接的な交換はできません。
一方でUSDTの送金ネットワークは以下の複数に対応しており、異なるネットワーク間でも取引が可能です。
上で示したように、USDTは多くのチェーンタイプに対応しているため、柔軟に取引を行うことが可能です。なお、異なるネットワークへUSDTを送金する際は、送金手数料がかかるため、余分なUSDTを用意しておきましょう。
USDTは、多くの仮想通貨取引所で基軸通貨として扱われています。取引可能な通貨ペアが豊富で、USDTを保持していれば他の通貨への変換が簡単に行える点が特徴です。
さらに、2022年に大きな話題となったMove to Earnプロジェクト「ステップン(STEPN)」や、急速に成長しているNFTの分野でも、USDTは積極的に活用されています。
例えば、世界最大級のNFTマーケットプレイスであるBybit NFTでは、USDTを使ってNFTを購入することができます。
時価総額第1位のビットコインは、世界初の中央管理者を持たない非中央集権型の通貨として登場し、世界を驚かせました。その後、多くの仮想通貨も非中央集権的な仕組みで運営されています。
一方、テザーとはTether Limited社が管理する中央集権型の仮想通貨です。中央集権体制を採ることで、発行枚数を調整し、米ドルとの連動を実現しています。
仮想通貨でありながら、法定通貨のような価格の安定性を確保するために、USDTは中央集権的な管理体制を採用しているのです。

USDTは米ドルにペッグされたステーブルコインです。発行体の信用、過去のデペッグ事例、アドレス凍結のリスク、USDC・DAIとの相違点を把握することで、安全性を正しく評価できます。
USDTの発行体であるTether社は、発行されたUSDTと同額以上の法定通貨および現金同等物を準備資産として保有しています。米国短期国債などを中心とした裏付けによって、1USDT=1USDの価格安定を維持する仕組みです。
実際の準備金構成は過去に議論となりました。USDTの全額が必ずしも現金で裏付けられているわけではありません。
準備金報告はアテステーション形式で公開されます。外部専門家による証明ではあるものの、監査水準に課題があると批判されることもあります。
信頼性を評価する際は、四半期ごとの準備金報告書の内容およびTether社のガバナンス・透明性を継続的に確認することが重要です。
USDTはこれまでにも一時的な価格乖離を経験しました。市場が混乱した局面や、Tether社を取り巻く規制・信用不安が高まった際、1USDTが1USDを一定期間下回るケースがあります。
大規模な資金流出や広範なパニック売りが発生しても、現時点では短時間で価値が回復した例が多数です。基軸ステーブルコインとしての流動性の高さが下支えとなっています。
根本的な信用問題や準備資産の質の低下などが生じた場合、今後もペッグ外れのリスクは残ります。
Tether社はコンプライアンス強化の名のもとに、特定のUSDTアドレスの送受信を凍結できる機能を有しています。制裁対象者や犯罪利用への対応として一定の効果がある仕組みです。
発行体の一存で資産が利用不可となるリスクがある点にも注意が必要です。2023年以降、凍結事例は増加傾向にあり、ブラックリスト管理が強化されています。
資産凍結を避けるためには、規制や取扱取引所のルール、取引先の健全性に留意する必要があります。
USDTとUSDCはどちらも米ドルペッグ型ステーブルコインです。主な相違点は以下の通りです。
| 比較項目 | USDT | USDC |
|---|---|---|
| 発行体 | Tether社 | Circle社、Coinbase等 |
| 監査形態 | アテステーション | 会計監査法人による月次監査報告 |
| 準備資産の内訳 | 米国債主体、現金以外を含む | 原則として米ドル現金・米国短期国債のみ |
| 規制対応力 | イタリアなどでライセンス取得、一部地域制限 | 米国主要州のマネーサービス認可取得 |
| アドレス凍結 | 可能 | 可能 |
| チェーン展開 | TRC20、ERC20他、多様 | ERC20他、主要チェーン |
USDCとは、伝統的な金融機関の監査を受けており、透明性で評価されています。一方USDTはグローバル流通量と取引量が圧倒的です。
発行体の監督枠組みや規制環境には違いがあります。
DAIは分散型ステーブルコインであることが最大の特徴です。主な相違点は次の通りです。
| 比較項目 | USDT | DAI |
|---|---|---|
| 発行体 | Tether社(中央集権) | MakerDAO(分散型組織) |
| 裏付け資産 | 米ドル等の中央集権型準備金 | 仮想通貨担保型(ETH、USDC等) |
| ペッグ維持手段 | 発行体で兌換・償還管理 | 金利調整や清算機構による自律的制御 |
| 透明性 | 報告書形式で発行 | スマートコントラクト上で常時オンチェーン開示 |
| アドレス凍結 | 可能(発行体判断で中央管理) | 一切不可(コントラクト自律制御) |
仮想通貨DAIは完全分散型で、担保となる仮想通貨の価格に影響を受けます。極端な相場変動時には1DAI≒1USDが崩れるリスクもありますが、誰にもコントロールされない仕組みが支持されています。
USDTは可用性・流動性に優れます。中央集権リスクが付きまとうという点で選択肢を比較検討することが望ましいです。

usdtは、日本国内の規制環境や取扱い取引所の限定性から、直接の購入や出金には独自の手順が必要です。日本居住者がusdtを効率良く入手し、安全に管理する方法を解説します。
なお、今はJPYCという日本円建てのステーブルコインもあります。
日本円からusdtに直接変換できる「オンランプ」を選定することが重要です。国内取引所のほとんどはusdtを直接扱っていないため、以下の手順が一般的になります。
代表的なオンランプは、国内銀行送金→国内取引所→海外取引所(Binance、Bybitなど)を経由する方法。取引所の選定時は、KYC(本人確認)、手数料体系、対応ネットワーク、規制リスクの有無を確認しましょう。
オンランプで準備したBTCやETHを用い、海外取引所でusdtを購入します。日本の金融庁登録済み取引所ではusdt現物市場がほぼ存在しないため、海外業者の利用が主流。
各ネットワークの違いは手数料や対応ウォレットに直結。取引所ごとに最低入金額や手数料体系も異なるため、事前に確認が重要です。
| 取引所名 | 日本語対応 | KYC必須 | USDT直接購入 | 主要対応ネットワーク |
|---|---|---|---|---|
| Binance | 一部 | あり | 可能 | ERC20、TRC20、BEP20 |
| Bybit | あり | あり | 可能 | ERC20、TRC20、BEP20 |
| MEXC | あり | あり | 可能 | ERC20、TRC20、BEP20 |
詳細はUSDT(テザー)の買い方を参考にしてください。
usdtは各種ブロックチェーン(ERC20、TRC20、BEP20等)で流通しているため、「どのチェーンのusdtを送金するか」の選択が重要になります。
チェーン違いで送金した場合、資産が消失するリスクが高まります。対応ネットワーク・手数料・反映速度などを比較検討してください。
送金対応の主要ウォレット(例:MetaMask=ERC20、TronLink=TRC20等)を利用すると、分散管理やセキュリティの観点でも有利です。
USDTの購入・送金には複数のコストが発生。主なコスト要素は以下の通りです。
特に送金ネットワークによって手数料が大きく異なります。
TRC20(Tron)ネットワークは送金コストが圧倒的に安く、反映も数分〜数十分と高速。ERC20(Ethereum)は安定性・セキュリティに優れるものの、ガス代が高騰するケースがあります。
| ネットワーク | 送金手数料 | 反映速度 | 主要利用用途 |
|---|---|---|---|
| ERC20 | 高い(数百〜数千円) | 数分〜1時間 | DeFi、NFT、人気取引所 |
| TRC20 | 安い(数円〜数十円) | 数分 | 送金・取引コスト最適化 |
| BEP20 | 極安 | 数分 | バイナンス系で利用 |
コスト最小化のポイントは、usdt出金時にTRC20やBEP20を選ぶこと。無駄な両替・経由業者を減らすことも重要です。
また、1usdt=1USDのペッグ維持にはTether社の準備金・監査報告にも注意が必要になります。
USDTを安全かつ効率的に利用するには、ブロックチェーンネットワークの種類や送金コスト、リスクについて理解することが非常に重要です。各ネットワークの特性を踏まえ、自分に合った運用方法を選びましょう。
USDTは複数のブロックチェーンで発行されていますが、代表的なものがERC20(イーサリアム)、TRC20(トロン)、BEP20(バイナンススマートチェーン)です。
各チェーンは手数料や送金速度、取扱取引所、セキュリティ特徴が異なります。
| チェーン | 主な特徴 | 手数料の目安 | 送金速度 | 取扱取引所例 |
|---|---|---|---|---|
| ERC20 | セキュリティ・分散性が高い。DeFi用途多 | 高め(数百円~) | やや遅い | Bybit・Binanceなど |
| TRC20 | 送金コストが非常に安い | 極めて低い(数円) | 速い | Bybit・Binanceなど |
| BEP20 | コスト低め、Binanceエコシステム中心 | 低め(数十円程) | 速い | Binanceなど |
送金手数料はネットワーク選択に大きく影響します。ERC20はガス代高騰で数百円レベルになることがあるのに対し、TRC20はほぼ数円~十数円程度で済みます。
手軽に小額を頻繁にやりとりしたい場合は、TRC20を選ぶことでコスト削減が可能です。
USDT送金時に一番多いトラブルが「チェーン選択ミス」による資産消失です。
以下の項目を必ず送金前に確認してください。
取扱ネットワークを誤ると資産が戻らないケースも多いため、慎重な手順確認が安全な運用の要です。
異なるネットワーク間でusdtをやりとりする場合、「クロスチェーンブリッジ」を利用することがあります。
以下のリスクにも留意してください。
安全なブリッジ利用のためには、信頼できる公式サービスを選び、常に最新情報とリスク情報をチェックすることが求められます。特に大口送金の場合には、その都度慎重に情報を見直しましょう。
日本国内でusdtを利用する際は、独自の法規制や税務ルール、厳格化する国際的コンプライアンスへの対応が必要です。
2023年のステーブルコイン規制(資金決済法改正)以降、日本国内で認可されたステーブルコインには一定の受入れが進みました。しかしUSDTは日本の暗号資産交換業者での取り扱いが原則不可とされています。
その理由は次の通りです。
このため、日本居住者がusdtを直接国内で売買・保有する場合、原則として次の方法に限定されます。
日本ではusdtをはじめとした暗号資産は、「暗号資産」として課税対象になります。
主な課税ポイントは次の通りです。
国際的なマネーロンダリング対策の強化を受けて、USDTにかかわるコンプライアンス要件も年々厳しくなっています。
主な要件は次の通りです。
このような背景から、日本在住者は次の点に注意が必要です。
USDTの日本国内での活用は海外と比べて制約が多く、手数料・規制・税務・送金インフラの観点で事前準備とリスク管理が必須となります。
ここでは、USDTを日本円に換金する方法を4つご紹介します。
上記のUSDTの換金方法について、詳しく見ていきましょう。
USDTを日本円に換金できる取引所を利用しましょう。下記の取引所で口座を開設し、USDTを送金・売却してください。
注文が約定すると、取引所の口座に日本円が入金されるので、あとは希望する銀行口座に出金申請を行うだけです。なお、USDTは換金時に税金がかかるので、あらかじめ課税額等を確認しておきましょう。
Bitrefillなどのサービスを使って、USDTをギフトカードに交換する方法もあります。Bitrefillでは、以下のギフトカードに交換可能です。
なお、ギフトカードは物理的なカードではなく、メールでコードが送られる形式で受け取ることができます。
P2P取引(ユーザー同士の直接取引)で、USDTを日本円に換金することもできます。P2P取引が可能なプラットフォームの一例として、Paxfulが挙げられます。取引したい数量を選び、検索するとオファーが表示されるので、条件が良い取引相手を見つけて交換を実行しましょう。
なお、P2P取引ではテザーを円に交換できるだけではありません。ドル建ての銀行口座をお持ちの方は、P2P取引を通じてUSDTをドルに換金することも可能です。
仮想通貨を日本円に両替して現金を引き出せるATMを使う方法もあります。日本で利用可能なものとして、ガイア社の仮想通貨両替機「BTM」があります。BTMは東京と大阪に設置されており、専用カードを使用して仮想通貨を送金すれば、現金を受け取ることができます。銀行を介さずに現金を直接受け取れる点が大きなメリットです。
現時点で対応している仮想通貨は以下の5種類です。
Best Wallet内でUSDTをビットコインに変えるなどして、他の仮想通貨に交換後、ATMから日本円に換金することができます。
USDTとは、テザー社が管理・発行する1米ドルと価値が連動したステーブルコインです。暗号資産市場で価格変動リスクを抑えながら取引や資産退避、送金の手段として広く利用されています。
USDTは複数のチェーン上で運用でき、特にTRC20が低コストな送金手段として普及中。ただし、ペッグ維持の仕組みや発行体の信用リスク、ネットワークや規制ごとの違いを理解することが重要です。
また、日本国内での入手や現金化には独自の注意点と規制があります。
本記事のポイントをおさらいしましょう。
USDTの仕組みや活用方法、安全性やリスクに関する理解が深まったことで、より安心して効率的にステーブルコインを活用できるはず。今後は、ご自身の利用目的やリスク許容度に合わせて適切なUSDTの運用を始めてみてください。
またステーブルコインにはEthena USDeなどもありますので、ぜひチェックしておきましょう。