YouTube、Roxom TVを削除──ビットコイン関連コンテンツへの締め付け強化か

YouTubeは5月14日、ビットコインに特化したメディア「Roxom TV」のチャンネルを突如削除し、約2,000人の登録者が一瞬で消失しました。

Roxom TVは、ビットコイン(BTC)に関するニュース、カルチャー、教育に焦点を当てた比較的新しいメディアプラットフォームで、暗号資産起業家のボルハ&ヘレナ・マルテル・スワード夫妻によって2024年11月に設立され、その直後にYouTube上で活動を開始していました。

Roxom TV、YouTubeによるBANについて発言

Roxom TVでビットコイン戦略ディレクターを務めるアレックス・マクシェイン氏は、Cryptonewsに対し、YouTubeからの明確な説明はなかったと語りました。

「最近公開した番組の書き起こし内容は、YouTubeからのメールに記載された違反理由とは一致していません」とマクシェイン氏は述べています。

YouTubeから送られたメールによると、Roxom TVは「有害で危険なコンテンツ」ポリシーに違反したとされています。

異議申し立てを行った後も、YouTubeからは「引き続きポリシー違反があるため、チャンネルは復元されない」との通知を受け取ったとのことです。

YouTube側からの連絡が極めて少ない中、マクシェイン氏は「自動的に発動されたBANだったのではないか」と推測しています。チャンネルが暗号資産関連プロジェクトを宣伝していると誤認された可能性があるといいます。

「これは風刺的な表現や、詐欺やハッキングに関する報道を誤って“推進”と認識した自動ボットによるBANだったのではないかと考えていますが、実際のところは分かりません」と同氏は語りました。

さらに、Roxom TVはYouTubeでライブ配信を頻繁に行っていたため、特にビットコインを扱う政治的なライブコンテンツがアルゴリズムに敏感に反応された可能性もあると指摘しています。

Roxom TVのYouTubeチャンネルは依然としてBANされたままですが、マクシェイン氏は復活の可能性に期待を寄せています。「ただし、人間による手動の審査が必要です。現時点ではボットによる自動審査しか行われておらず、すべて却下されています」とコメントしました。

YouTube、ギャンブル関連コンテンツを規制強化──仮想通貨も対象か?

Roxom TVは最近YouTubeから削除された最新のビットコイン関連チャンネルですが、YouTubeは過去にも“仮想通貨パージ”と呼ばれる大規模なチャンネル削除を2019年12月に行っています。

情報筋によれば、このとき少なくとも35の仮想通貨関連チャンネルが影響を受け、Bad Crypto PodcastやAltcoin Dailyといった人気番組も含まれていました。さらに、BanklessやCointelegraphといった大手メディアのチャンネルも一時削除されましたが、現在は復旧しています。

CNBC TV18によると、削除の理由は「コミュニティガイドライン違反」とされていましたが、実際は機械学習アルゴリズムによってコンテンツが誤ってフラグ付けされたことが原因と見られています。

YouTube、ギャンブル対策で方針強化──仮想通貨との境界は曖昧?

当時は誤検出が主因とされていましたが、YouTubeは近年、ギャンブル関連コンテンツに対しても規制を強化しています。3月4日、YouTubeはギャンブルサイトの宣伝や関連コンテンツの公開に対する警告を発表し、「確実な収益を約束する」ような動画も削除対象になると明言しました。

Roxom TVのマクシェイン氏もこの方針について認識していましたが、「今回の削除理由として、これらの規約違反については一切言及されていなかった」と述べています。

YouTubeのアルゴリズムは、仮想通貨とギャンブルコンテンツの違いを適切に認識できない可能性があります。特定のキーワードや文脈が、アルゴリズムにより誤ってトリガーされることも要因です。

アルゴリズムとキーワードの罠──専門家が語る現状

Hype社のショート動画コンテンツ責任者ニッキ・マルティネス氏は、特定の言葉や表現によりコンテンツがフラグ付けされたり、シャドウバンされる事例を見てきたとCryptonewsに語っています。

マルティネス氏は、世界中のクリエイターと連携し、仮想通貨クライアント向けに大量のコンテンツ制作を支援しています。「私自身も、TikTokでアカウントがバンされた理由について話しただけで、シャドウバンされたことがあります」と明かしました。

TikTokでは「保証された収入」「簡単に稼げる」「即時支払い」などの表現、さらにはトークン名までもが不正確な金融アドバイスや詐欺と誤認され、コンテンツが自動で制限されることがあるとのことです。

「モデレーションはほぼ自動化されており、過剰に反応する傾向があります。特に新しいアカウントがリンクを投稿すると、詐欺的と判断されやすいです」とマルティネス氏は語ります。

また、YouTubeなど多くの動画プラットフォームは、金融関連コンテンツによってユーザーがプラットフォーム外へ誘導されることを嫌う傾向があると指摘しています。

ただし、TikTokもYouTubeも異議申し立ての手段は提供しており、「削除が覆り、100万回以上再生された例もあります」とマルティネス氏は述べました。とはいえ、これらの規制は世界的に金融コンテンツへの圧力が強まる中で、仮想通貨のような未規制分野にも及んでいるのが現状です。

Web3時代の投稿戦略──分散型プラットフォーム活用も重要に

こうした締め付けが続く中で、Roxom TVのマクシェイン氏は「Nostr」や「Calaxy」といった検閲不能な分散型プロトコルの重要性を強調しています。

一方で、YouTubeやTikTokのようにリーチの大きい中央集権型プラットフォームも引き続き活用したいというクリエイターも多いでしょう。

その場合、マルティネス氏は金融に関する言い回しに細心の注意を払うべきだと提案しています。「TikTokで成功するには、どう言うかが鍵です。“副業”や“デジタル収入”といったソフトな表現、たとえば“即時支払い”ではなく“承認後に引き出し可能”といった言い回しが違反を避けやすいです」と述べています。

さらに、中央集権型のSNSの中でも、仮想通貨コンテンツに寛容なプラットフォームとそうでないものがあるとし、「X(旧Twitter)は最も自由度が高く、効果的です。Instagram、TikTok、YouTubeで未規制の業界について投稿する場合は、メールリスト、クローズドコミュニティ、TelegramやDiscordといった代替手段も必須です。1つのプラットフォームに依存すべきではありません」と強調しました。

マルティネス氏は、最終的に成功するのは「仮想通貨を身近で文化的に関連性があり、アルゴリズムに引っかからない形で伝えられる」クリエイターだとしています。

人気仮想通貨系クリエイターであるWendy O氏(YouTube登録者数約2,050人)は、これまで一度もYouTubeからチャンネルを削除されたことはないと述べ、「プラットフォームのポリシーをよく読み、表現に注意し、必要な情報開示を行うこと」が成功の鍵だと語りました。

この記事についてのご意見をお聞かせください!

この文章は役に立ちましたか?

最近の投稿