
ドナルド・トランプ大統領が大規模な関税措置を導入し、米国の主要貿易相手国に高率の関税を課したことで、金融市場が大きく動揺している。
メキシコとカナダからの輸入品には25%の関税、中国製品には10%の関税が即時発効され、市場は混乱に陥った。この影響は暗号資産(仮想通貨)市場にも波及しており、投資家の不安が広がっている。
ビットコイン(BTC)は、数週間ぶりに10万ドルの心理的節目を割り込んだ。 インフレ懸念と経済の不透明感が投資家心理を圧迫しており、一部のアナリストは「史上最大のベアトラップ」になる可能性を指摘している。
現在、ビットコインは9万5,000ドルの重要なサポートラインを試している状況だ。BNCリサーチのジェイソン・ジョーンズ氏は、「9万5,000ドルの攻防が今後の市場を決定する。FRBの利下げ、トランプの関税政策、市場センチメントが鍵を握る」と述べている。
1月には10万2,000ドルの史上最高値で月間終値を記録し、初めて6桁の大台を突破したビットコインだが、トランプの関税が消費者物価を押し上げる可能性があり、さらなる市場の混乱が予想されている。
ビットコインだけでなく、アルトコイン市場も軒並み下落し、リスク資産全体に波及している。
トランプ大統領は、金融市場の動揺を意に介さない様子を見せている。自身のSNS「Truth Social」で次のように投稿した。
Today, I have implemented a 25% Tariff on Imports from Mexico and Canada (10% on Canadian Energy), and a 10% additional Tariff on China. This was done through the International Emergency Economic Powers Act (IEEPA) because of the major threat of illegal aliens and deadly drugs…
— Donald J. Trump Posts From His Truth Social (@TrumpDailyPosts) February 1, 2025
また、トランプ氏は関税措置について、米国へのフェンタニル流入を阻止するために必要な政策だと主張。しかし、輸入品の価格上昇によるコスト負担は最終的に米国の消費者に転嫁される可能性が高い。
カナダのジャスティン・トルドー首相は、トランプ政権の関税措置を厳しく非難し、「強力な対抗措置を講じる」と宣言した。メキシコも報復関税を準備しており、貿易戦争の全面化が懸念されている。
エコノミストたちは、貿易摩擦が長引けば、カナダとメキシコの景気後退を引き起こし、世界経済全体に悪影響を及ぼす可能性があると指摘している。
短期的には市場の混乱が続いているが、ビットコインの長期的な見通しは依然として強気だ。
ビットコインの現物ETFは上場からわずか1年で1,250億ドル以上の資産を集めており、機関投資家の関心が高まっている。アナリストの中には、2025年までにビットコインが16万~18万ドルに達する可能性があるとの予測も出ている。
次の市場の重要イベントは、2月7日に発表される米国雇用統計だ。この指標が予想を下回れば、FRBの利下げ期待が高まり、ビットコインやリスク資産にとって追い風となる可能性がある。
トランプ大統領は、北米だけでなく欧州連合(EU)にも矛先を向けている。
同大統領は、EUの貿易政策を「不公平」と批判し、さらなる関税措置を示唆している。エコノミストたちは、米国とEUの貿易戦争が本格化すれば、世界経済の不況リスクが一段と高まると警鐘を鳴らしている。
トランプ政権の関税措置が続く限り、金融市場のボラティリティは高まることが予想される。
ビットコインが10万ドルを割り込み、一部のアルトコインが10%以上下落するなど、市場は混乱の渦中にある。今後、さらなる関税措置が発動される可能性も高く、投資家は引き続き慎重な対応を迫られることになりそうだ。
ビットコインはこの混乱を乗り越え、究極の安全資産としての地位を確立できるのか、それともさらに下落を続けるのか。確実なのは、世界の貿易環境が大きな転換点を迎えているということだ。
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