
コインベース・カストディは26日、機関投資家向け暗号資産(仮想通貨)保管サービスのセキュリティ保障を大幅に強化したと発表した。
今回の強化策では、商業犯罪保険ポリシーの拡張により、ホットウォレット(オンライン接続されたウォレット)への盗難対策が特に強化された。この動きは、2021年に約6,000ユーザーのアカウントが不正流出被害を受けた過去のインシデントを教訓とし、機関投資家の増加に伴うリスク管理要件に対応するものだ。
コインベース・カストディはコールドストレージ(オフライン保管)の積極的な活用と顧客資産を厳格に分離管理する方法も採用している。これにより、機関投資家の大規模資産をより安全に保護する体制を整えた。
今回の強化策の背景には、複数の重要な要因が存在する。まず米国証券取引委員会(SEC)による暗号資産ETFの規制強化がある。過去のセキュリティ事例、特に2021年に発生したフィッシング攻撃による不正流出事件の教訓を踏まえ、適切な保管基準の確立が求められていた。
また、機関投資家からの需要拡大も大きな要因だ。米国でスポットビットコイン(BTC)ETFを提供する多くの機関がコインベースのカストディサービスを利用しており、これら機関投資家の信頼維持が急務となっていた。
さらに、ファイアブロックスやBNYメロンなどの競合他社が保管市場に参入する中、コインベースは業界最高水準の顧客価値提案を維持する必要があった。
コインベースは2021年に2段階認証システム(2FA)への攻撃を受け、6,000人以上のユーザーが資金を不正に引き出される事態が発生した。当時の調査では、システム自体の脆弱性は確認されなかったものの、「社会工学的手法による」攻撃であったと説明されていた。
規制基準の遵守面では、コインベース・カストディ・トラスト・カンパニーはニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)の監督下で運営されており、顧客資産を個別に隔離管理している。2020年からはSOC 1 Type IIおよびSOC 2 Type II監査を継続的に完了し、内部管理体制の健全性を証明してきた。
グレイスケールののETF資産をコインベース・カストディが保管することが決定されたことは、同社のセキュリティ技術に対する業界の信頼を示している。
今回の強化策は、暗号資産(仮想通貨)業界全体のセキュリティ基準向上にも貢献すると見られている。機関投資家の参入が加速する中、仮想通貨の税金対応を含む総合的な資産管理の安全性は最重要課題であり、コインベースの取り組みは業界標準を引き上げる効果を持つと期待されている。
コインベースの広報担当者は「機関投資家の資産を守ることは最優先事項である」とコメントし、「継続的なセキュリティ強化は当社の中核的価値観」であると強調している。
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