あなたにとってゾンビは怖いものだろうか? 近年、さまざまなエンタメの舞台に登場するゾンビ。ビデオゲームの世界でもたくさんのゾンビが描かれてきたが筆者にとってひさしぶりに怖いゾンビに出会ったと言えるのが現在アーリーアクセス版がリリースされている『Ed-0: Zombie Uprising』(トレーラー)である。

とにかく本作は「ゾンビが怖い」。この点において非常に優れたホラー体験として筆者の目にはうつっている。そしてクセになる。人を選ぶ作品であることは間違いないのだが、もしあなたがアクションゲームが好きで、緊張感のあるホラー体験に飢えているならこの血まみれの冒険に繰り出してみてほしい。
システムはオーソドックスな3Dローグライトアクション テンポよくビルドできる楽しさがある
本作は3Dのローグライトアクションだ。プレイヤーは侍の「無明」となってゾンビ討伐に赴くというのが基本的なストーリーの骨組みとなる。チュートリアルを終えると拠点となる九九村(くくむら)から、ステージ1「横浜村」へと繰り出すことになる。

ステージは15層からなるダンジョンとなっており、ステージ内に配置された「鳥居」に入ることで次の階層へ進める。

5層と10層はアイテムの補充ができる休憩用の階層で、15層にはボスが待ち受けている。ボスを倒すとステージクリアとなり次のステージへ進める流れだ。ローグライトのため、途中でセーブはおこなえず1層からボス攻略まで一気にクリアする必要がある。各階層は固定階の1層と14層を除いてランダム生成され、次の階層へと進むための鳥居の場所も常に異なる。鳥居は1つの階層内に数種類あり、選んだ鳥居によって次の階層で無条件でアイテムを入手できるものもあれば、多数の敵が出現するものも。そのため鳥居のセレクトも重要なルート選択となる。

侍「無明」の戦闘アクションは刀を用いて弱・強攻撃とスキル攻撃を駆使してコンボをつなげ、戦っていくものとなる。スキルはドロップアイテムで入手できる「秘伝書」で習得可能で、画面右下の4つのショートカットに自由に配置して使用することができる。トレイラーでは力士、忍者もプレイアブルキャラクターとなっていたが、今回にてステージ2の途中まで進めた際に使用できたのは侍の無明だけだった(忍者は現在未実装)。

スキルは「十文字斬り」、「袈裟斬り」などの高ダメージを生む攻撃スキルに加えてゲージの補充を促す「瞑想」や一定時間バフ効果をもたらすものなど多数ある。筆者はXboxコントローラーを用いたプレイだったのだが、スキルはLBボタンをおしながらXYABのいずれかを押すだけで繰り出せるので即席の連続コンボも簡単な操作で繰り出せる。


そのほか、最大10個まで装着できるバフ効果のある「お守り」がある。ドロップアイテムはかなり頻繁に手に入るため、プレイヤーが無明をサクサクとテンポよく強化できるのは本作のかなり楽しいポイントだ。アイテムには体力や攻撃力の上限値をあげる「丸薬」、遠距離武器のクナイ、投げつけて敵を酔っ払わせる「酒」などさまざまなものがある。

ゾンビたちは鬱陶しく、途切れない緊張感がつねにつきまとう

本作の最大の魅力であり、大きな驚異になっているのが各ステージで対峙するザコ敵(であるはず)のゾンビだ。
このゾンビたちはとにかく堅く、刀での3連打(弱弱強)で攻撃では倒れず、この3連打攻撃をさらに2回程度与え続けてやっと倒せるほどである。やっとの思いで倒したとしても、一定時間後に復活してしまう。この復活がじつにいやらしい。
厄介なことに道中でゾンビが群れになって道を塞いでいることがある。ゾンビはあくまでザコであるため、一発の攻撃は微々たるものだ。動きもゆっくりとしている。しかし、群れに囲まれた際には斬っても斬っても倒れず、倒したはずのゾンビも復活し、じわりと周りを囲まれライフを削られる。
キャラを強化し、「斬ってやるぜ」と勢い勇んで飛び込んだものの、こちらの攻撃の範囲外から一撃を喰らい、そこを起点に集団の集中砲火をあびてあっという間に絶命した回数もかなり多い。ゾンビは「なかなか倒れない」、「一定時間後に復活する」という特徴がプレイヤーを苦しめる。
また稀にゾンビの群れの中に「巨漢」や「落武者」という攻撃力の高い変種のゾンビが混じっていることもあり、たちが悪い。ステージのマップはシンプルで迷うレベルではないが、大量に湧き出してして道をふさぐゾンビ。これがとにかくやっかいだ。15層に連なるダンジョンに挑むたびにプレイヤーはゾンビに苦渋を舐めさせられることになる。

ゲーム側のバランス調整も絶妙でこちらがドロップアイテムで強化を進めるとそれに伴って、ゾンビや強敵の配置も熾烈さを増す。「ゾンビの群れの怖さ、不気味さ」が絶妙なバランスでアクションゲームに落とし込まれている。
「ゾンビの疲れはゾンビで癒せ」一網打尽に斬り刻むことで得られる快感
本作は湧き出るゾンビによる緊張感が途切れることなく続く。しかし、その緊張から一気に解き放たれる、爽快感があふれる瞬間もある。それはやはり「ゾンビを一掃する」ときにほかならない。「ゾンビの疲れはゾンビで癒せ」というわけだ。
前述したように本作では攻撃スキルである「秘伝書」が簡単にドロップで手に入る。スキルは一度使ってもクールタイムを経てすぐに使えるのでクールタイムさえ把握してしまえばバンバン使っても回数制限はない。
またスキルはドロップアイテムで強化も可能だ。スキルの中には一発でゾンビを倒すことができるものも存在するため、これらを用いたコンボ攻撃で最大火力を叩き出し、大量のゾンビを一掃するのは本作の醍醐味だろう。


さて、本作のアイテムだが火炎瓶やかまいたちの札など全体攻撃を与えるアイテムも存在するが秘伝書スキルに比べ効果が地味なため、敵を一掃するには至らず、イマイチ実戦ではうまく機能しない印象が残った。
ゾンビの一掃は簡単ではないのだが、達成感やコンボの爽快感はバツグンだ。余談にはなるが大量の返り血で血だらけになっていく無明をみて筆者は海外ドラマの『ザ・ボーイズ』を思い出してしまった。
このテイストだから描けるホラーアクションはかなりクセになる
本作はグラフィックス、キャラクターモデル、アクションのできなどはひと昔前のゲームを連想してしまうような仕上がりになっている。しかしながらこのテイストであるからこそ描ける不気味さや怖さを生み出すことに成功している。ゲーム中の緊張感が途切れることはなく、ついついリトライを繰り返して探索してしまう中毒性もある。筆者も初プレイからあっという間に10時間ほどプレイしてこの記事を作成している。救済のための育成要素も用意されておりステージの途中で絶命しても、持ち帰った金銭(死ぬと半分になる)や徳(経験値)でさまざまな要素をアンロックしつつ、再びステージに挑むことができるのだ。


本作に不満点がないわけではない。アクションの当たり判定が曖昧なところや所持アイテムがすぐにいっぱいになってしまう点、敵キャラの種類に乏しい点、ボス戦が淡白に感じるところなど、手を加えてほしい点もいくつかあげることはできる。しかしながら、本作はチープで悪趣味なB級映画のように尖ったセンスが貫かれた魅力あふれる作品であることも確かだ。
和風ゾンビローグライトを存分に体験できる『Ed-0: Zombie Uprising』は現在アーリーアクセス版がSteamにて販売中。アップデートも頻繁におこなわれているようだ。興味のある方はぜひプレイしてみてほしい。
著者: “昆野立 — [source_domain] ”